乾燥とは|産業用乾燥機の必要性

乾燥とは

乾燥とはなんでしょうか?
乾燥に業務として携わっていない多くの方々は、「濡れた状態のものから水を除くこと」と考えるのではないでしょうか。
もちろん誤りではありませんが、十分とはいえません。
より広い概念として「脱水」があり、その操作を行う機械が脱水機です。脱水機の目的は“余剰な水を除去すること”であり、その意味では乾燥も脱水操作の一部に含まれます。

脱水方式には多数の種類があります。従って、遠心力式、圧搾式、ろ過式、加圧式、減圧式、化学反応式など、多様な脱水方式に基づく脱水機が存在します。

では、乾燥と脱水の違いは何でしょうか。

不要な水を除去する際、「水をそのまま除くのか」「状態を変えて除くのか」の視点が重要です。
液体の水を、熱エネルギーを用いて水蒸気(気体)へ相変化させて取り除く操作──これが乾燥です。そして、水を蒸発させるには、熱エネルギーを付与することが非常に効果的だといえます。
つまり乾燥とは 「熱エネルギーで液体を気体に相変化させて除去する、熱と物質の移動現象」 と定義できます。

家庭用洗濯乾燥機の工程で考える

身近な例として家庭用の洗濯乾燥機の工程を見てみましょう。
水を含まない状態の質量が5kgの衣類を処理する場合、工程ごとの質量の推移と所要時間は次のようになります。

【家庭用洗濯乾燥機の工程例】

質量 kg 質量増減 kg 水分 %,WB 所要時間 min
洗濯前 5.2 N/A 3.8 N/A
洗濯後 25.0 +19.8 80.0 20
すすぎ後 25.0 0 80.0 10
脱水後 9.0 -16.0 44.4 5
乾燥後 5.1 -3.9 2.0 120~180

この表から分かることは以下の通りです。
・脱水は短時間(5分)で16kgの水を除去できる
・乾燥は長時間(180分)を要する

しかし、脱水操作を延長しても一定以上の水分は取り除けません。さらに、長時間の脱水は衣類の縮み・傷み・変色といった弊害を生じます。このため、一定段階で脱水から乾燥へ工程を切り替える必要性が出てくるのです。ただし乾燥には相変化のための熱エネルギーが必要であり、時間とコストがかかります。

自然乾燥と産業用乾燥

天気が良く、気温が高く、湿度が低く、適度な風速がある日であれば、屋外に干して乾燥(天日干し)した方が洗濯乾燥機による乾燥よりも早く仕上がることもあります。太陽によるエネルギーと自然対流により、熱と物質の移動現象が成立するためです。

しかし、現実にはそういった”乾燥条件の良い日”ばかりではありません。
安定した乾燥品質と処理能力を確保するためには、やはり、産業用乾燥機による制御された乾燥操作が必要になるのです。