用語集

    

全般に関する用語

CAS

CASと呼ばれる略語はたくさんありますが、ここではACS(American Chemical Society)が管理している世界標準の化学物質管理登録番号をいいます。
一般名のみならず商品名にも番号が割り当てられているものもあります。
一つの物質に数個の番号が割り当てられているものもあります。しかし番号がわかれば何の物質なのかを辿ることができるため便利なため使用されます。

位置エネルギ

エネルギ形態のひとつで、単位は[J]です。質量と高さに依存します。
m(質量:kg) × g(重力加速度9.8:m/s^2) × h(高さ:m)

可逆変化と不可逆変化

あるものが状態Aから状態Bへと変化し、そののち状態Bから状態Aへと逆の変化をし元の状態へ戻ることを可逆変化といいます。
前後状態の変化や他への作用がないことが条件です。そこから逸脱すると不可逆変化です。

凝固熱

潜熱の一つです。
液体から固体に相変化する際に、相変化する物質から物質外へ移動する熱量です。
例えば水が氷に変化する場合には、約334kJ/kgの熱量が放出されます。
逆にいいますと、熱量が移動できなければ相変化することができないことになります。

状態量

現在の状態のみに依存する量を状態量といいます。
温度、圧力、体積、密度、エンタルピなどは状態量です。
それに対して、熱量や仕事は変化の進み方に関係する量ですので状態量ではありません。

対数

乾燥に関する計算においても対数は多く使われます。
また対数は積の計算を和として扱うことができる便利なものです。年配の方は計算尺を使われたことがあると思います。
使用頻度が大きいものは自然対数と常用対数です。自然対数は底をe(ネイピア数≒2.718)とするものであり、常用対数は底を10としたものです。
しかしはじめて見る計算式中にlogがでてきた時にどのように解釈すればよいのでしょうか。
関数電卓の場合には[log]キーと[ln]キーがあるため[log]は常用対数であり[ln]は自然対数であることが多いようです。
これは関数電卓が一般的に工学系の人たちが使用するツールであるためだと思います。
逆に数学系の人たちはlogといえば、それは自然対数を指すと考えるのが普通だと思います。

このように底を省略した場合の解釈は難しいものです。工学系の書籍にもlogを自然対数として用いていることが稀にあります。
ちなみにExcelでは対数をLOG(真数,底)と書くことができますので入力時に困ることはないと思います。
ただしLOG(真数)表記だと常用対数であり、LN(真数)表記は自然対数を意味するので関数電卓と同一です。
計算式を記述する場合においても、Excelなどにおいても底を省略しないことが最良ではないでしょうか。

断熱飽和温度

断熱された状態において湿潤成分が相変化している(蒸発)際の温度です。
湿球温度は、空気流が一定以上の速度であれば、湿潤成分が蒸発し断熱された状態で飽和した温度と同じになりますので、乾燥処理させている乾燥物の恒率乾燥期における湿球温度と断熱飽和温度は近似値です。

バッキンガムのπ定理

物理現象は,無次元数の組み合わせでまとめることができます。
ある現象の特性を説明するため無次元数であらわすには、現象に関する物理量の全数Nから、そのN個の次元式に必要な基本単位の数mを引いたものになります。

比熱

ΔQ = mcΔtのなかのcであり、単位質量の物質を1℃昇温させるのに必要な熱量であり、単位質量が1kgであれば単位はkJ/kg・Kです。
定圧比熱と定容比熱(あるいは定積比熱)がありますが、日常的には大気圧下ですので定圧比熱を用います。
定圧比熱は加えられた熱量が加熱のみではなく仕事として使われるため、定容比熱よりも値が大きくなります。
ただし気体は熱による体積変化が大きいですが、液体・気体は小さいので工業的には無視しても問題はありません。

フガシティ

逃散度などと訳される、拡散しやすさの指標です。物質が媒体からどの程度でていき易いかどうかの目安です。
気液平衡などでよく使われます。

輸送物性

粘度(=ニュートンの法則)、熱伝導率(フーリエの法則)、拡散係数(フィックの法則)などの移動現象の物性値を総称して輸送物性といいます。
これらは分子の運搬に由来する現象です。

乾燥に関する用語

限界含水率:Wc

恒率乾燥期から減率乾燥期へ推移するときの含水率をいいます。すなわち限界含水率までは乾燥速度が大きく、品温の上昇もなく一定の値で保たれます。この値は物性値ではなく、操作条件によって変化します。

減率乾燥期

限界含水率を経過すると乾燥物の内部から湿潤成分の移動が減少し、乾燥物の表面から湿潤成分がなくなります。それに伴い乾燥物の品温が上昇します。したがって熱風と品温との温度差が小さくなり、ポテンシャルが小さくなり、乾燥速度も小さくなります。

恒率乾燥期

乾燥物に供給された熱が全て湿潤成分の蒸発に使用される期間です。したがってこの期間の水分は経過時間に比例して減少します。
また乾燥物の品温は一定(近似的に熱風温度と湿度における湿球温度)に保たれます。

向流と並流

連続処理をおこなう乾燥において、熱媒体や熱風を流す方向と乾燥物を流す方向とのあらわしかたです。
両方が逆方向であれば向流であり、同方向であれば並流です。
使い分けは目的によって選定されますが、一般的に並流が多く使われます。

平衡含水率:We

ある条件において乾燥物を放置した際に平衡する含水率です。この値は乾燥物の組織構成などによる物性値です。相対湿度の影響を大きく受けますが、温度の影響は小さいです。

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伝熱に関する用語

クヌーセン数:Kn

一般的には流体を連続体として扱かえるかどうかの判断のための指標です。
Kn <<
1であれば連続体(粘性)の状態であり、Kn >> 1であれば分子間衝突を考慮しなくてもよい状態です。
クヌーセン数 = 平均自由行程 ÷ 移動についての代表長
※代表長は、配管内径を用います。
低圧でのガスの流れをあらわします。真空乾燥における、熱・物質の移動や拡散に対する影響判断の指標です。

蒸気システム

乾燥機の熱媒として水蒸気システムは多く利用されます。
水蒸気は状態により種類がありますが、その中でも飽和水蒸気がもっとも利用されます。
それは熱伝達率が大きい点と、潜熱があるため大きな熱量を使え圧力が変わらなければ熱交換時にも温度が一定である点がメリットとなるためです。
過熱水蒸気は顕熱と潜熱の両方を利用するため熱交換によって温度が変動することがデメリットとなるため乾燥用途では一般的ではありませんが、
ある温度・水分域では乾燥速度が大きいことがあるため利用されます。
また大きな温度が必要な場合や低酸素状態で乾燥したい場合に利用されることもあります。

ニ乗三乗の法則

面積は長さの2乗、体積は長さの3乗に比例しますので、長さに起因する現象の変化も2乗・3乗に比例した値になります。
乾燥においては受熱面積と受熱量との関係性などが該当します。

ヌセルト数:Nu

静止している状態と比較して、どの位の大きさの伝熱量があるのかを示す数値です。静止している流体の熱伝導率と、対流による熱伝達との比率を示します。
ヌセルト数 = (流体の熱伝達率 × 代表長) ÷ 流体の熱伝導率
※代表長とは、A:配管では内径を、B:平板では平板長を指します。

熱応力:σ

温度の上昇した固体は、拘束のない場合は熱によって伸びるのですが、
  伸び:mm = 線膨張率 x 温度差 x 元の長さ:mm
拘束のある場合は伸びることができないため、熱応力となってしまいます。
  熱応力:MPa = 線膨張率 x 温度差 x ヤング率:MPa
鋼は線膨張率は小さいのですが、ヤング率が大きいため、比較的に熱応力は大きいです。

熱拡散率:α

温度伝導率、温度拡散率ともいわれます。物体内部の温度上昇の大きさ(温度の伝わりやすさ)をあらわす指標です。
非定常状態から定常状態(平衡)になるまでの速さをあらわすともいえます。
熱伝導率を蓄熱能力(=比熱×密度)で除した値です。
大きさは一般的に、金属>気体>液体の順です。

熱通過率:k

物体Aから物体Bへの熱の伝わりを考える場合、その伝わり方が対流であれば物体Aと物体Bの熱伝導率と物体A-B間の熱伝達率が関係した値になります。
熱通過率[W/(sq.m・K)] = 1 ÷ ( (Aの板厚 ÷ Aの熱伝導率) + (1 ÷ 熱伝達率) + (Bの板厚 ÷ Bの熱伝導率) )

熱伝達率:h

熱伝達係数や境膜伝熱係数ともいいます。流体内部に生ずる境界を通しての熱移動です。
熱伝導率のような物性値ではなく、流体の状態によって変化します。

熱媒システム

伝熱用途にもいちられる合成油である「熱媒体油」を省略して熱媒と呼称されています。
生産工場において一般的に使われる飽和水蒸気で求めることが困難な200℃以上の温度での加熱をする場合、水よりも高沸点の合成油が媒体として用いられます。
飽和水蒸気のように潜熱を利用できる気相方式の方が熱量的には有利ですが、より多くの設備が必要となるため、液相方式での使用が使い分けられています。

ビオ数:Bi

ヌセルト数と同様な定義です。しかしヌセルト数が流体側の熱伝導率であるのに対し、ビオ数は固体側の熱伝導率を用います。
Bi<< 0.1であれば、物体から出ていく熱より、物体内に広まる熱が大きい状態です。
ビオ数 = (流体の熱伝達率 × 代表長) ÷ 固体の熱伝導率
※代表長とは、A:配管では内径を、B:平板では平板長を指します。

レイノルズ数:Re

流れの慣性力の粘性力に対する比を示す数値です。数値が大きいほど粘性の影響が小さくなり、慣性の影響が大きくなります。
したがって流体の流れが乱流になります。
レイノルズ数 = (流体の速度 × 代表長) ÷ 流体の動粘性係数
※代表長とは、A:配管では内径を、B:平板では平板長を指します。

もっとも代表的な無次元数です。
伝熱の観点からは乱流の方が熱伝達率は大きいのですが、デメリットとして流体の抵抗が大きくなってしまいます。

その他の物性に関する用語

凝集性

凝集力は分子・原子間の結合力です。広義的には固体や液体は凝集相ということになります。
ここでは粉体の凝集性について述べます。粉体自体は小さな固体の集まりであり、まずは一次粒子と呼ばれる単体の大きさのものがあります。
そして単体と単体とが結合して二次粒子という状態を形成します。したがって二次粒子になりやすい指標として凝集性が使われます。

セグリゲーション

ある集合体が均一にない状態や混合物にバラツキがある状態をいいます。
一種の偏析状態ともいえます。
乾燥においては湿潤成分の偏りを指します。乾燥前に湿潤成分の偏りがあれば乾燥後にも偏りが解消されないことが多くなります。
また乾燥前の湿潤成分が同じであっても、乾燥層の上下や位置の差異により湿潤成分にムラがでることがあります。
流動などの乾燥では流動層の形成に問題があれば乾燥物の流動運動が均一性を欠き、湿潤成分のムラが発生します。

ダイラタント流体

非ニュートン流体の一つです。速度勾配が大きいほどせん断応力が増加するため、流れが強くなるほど流動しにくくなる特性を持ちます。
身近なところではスターチに水を混ぜ合わせたものなどです。

チクソトロピー性

非ニュートン流体における、粘性に関する特性の一つです。ある物質を撹拌(せん断)操作していると徐々に粘度が小さくなり、撹拌をやめ放置していると粘度が大きくなる性質のことです。つまり外力の有無によって結合状態に変化が発生するということです。
身近なところではグリースなどです。撹拌することによってゲル状からゾル状へと変化し粘性が小さくなり、止めるとゲル状へ戻ります。

チャネリング

乾燥プロセスにおいては、特に流動乾燥や振動流動乾燥において発生する現象です。
熱風が流動床を経て乾燥物を通過し熱の授受をおこなうわけですが、その際に熱風が均一性や万遍性を欠き、ラットホール状の進行になってしまうことをいいます。
特に乾燥物が凝集性の粉体の場合において現れます。乾燥物間に発生することも、乾燥機と乾燥物の間に発生することもあります。
乾燥効率の観点からも好ましくないため乾燥条件の変更をしなければなりませんが、乾燥の進行と共に解消する場合も多くありますので、見極めが必要です。

潮解性

物質(主に結晶状)が普通の大気状態(温度、湿度、気圧)において、大気中の水蒸気を吸湿し表面が解け、液状の水でベトベトとした状態になることをいいます。
なかでも湿度の影響がもっとも大きく、物質により発生する湿度が違います(臨界湿度)。広義の吸湿性の中の一つで、物質表面の水の水蒸気圧と大気の水蒸気圧との関係、更に物質の分子と水分子との結合力との関係で発生します。
身近なところでは苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)などです。

非ニュートン流体

ニュートンの粘性法則に当てはまらない、せん断応力と速度係数との関係が比例関係でない粘性をもつ流体をいいます。

装置・制御などに関する用語

スター-デルタ始動

容量の大きな電動機において直入始動(デルタ始動)をすると、起動電流が全負荷電流の6倍程度になってしまうのを軽減するためスター-デルタ始動をおこないます。弊社では5.5kW以上の電動機に対して使用するのが基準です(もちろんユーザ様の要求仕様が優先です)。
一般的にタイマメーカがスター-デルタタイマとして製造しているものを組み込みます。
時間設定はA:スター時間、B:切り替え時間の2つがあります。Aは負荷の種類によって設定し、ポンプの場合で5~15秒程度、送風機だと30秒あるいはそれ以上の値になります(電流値の推移を確認し低下した頃合)。またBは0.5秒が標準です。
必ず確認しながら調整をしなければなりません。 

送風機

一般的な送風機を大別すると、遠心送風機と軸流送風機になります(もちろん他にもあります)。
遠心送風機 =>
風は軸に対して直角、遠心方向に流れます。回転方向が変わっても流れ方向は変わりません(風量は変わります)。
軸流送風機 =>
風は軸と平行に流れます。回転方向が変わると流れは反対になります。
また吐出圧力により、1000mmAq未満をファン、1000mmAq以上をブロアと呼びます。

電力調整器

電力を無段階にコントロールする制御機器で、サイリスタ式調節器ともいわれます。電気を熱源とする乾燥機においては、電気ヒータを温度調節する際に最も多く使用される制御方式です。通常は温度調節器からのアナログ信号の入力により出力が決定されます。
勾配設定により上限にリミットを設けることができます。