水とは

水の状態

水は、私たちにとって最も身近な物質のひとつであり、人体の約60%を占める、生命活動に不可欠な成分です。
乾燥操作においても、除去対象となる湿潤成分の大半はこの「水」です。

水は、水素原子2個と酸素原子1個が共有結合した化合物で、分子量は約18.015、分子サイズは約3.3Å(SI単位では約0.33nm)です。

水の状態

常温・常圧では液体として存在し、低温では固体(氷)、高温では気体(水蒸気)となります。
水の特異な性質として、固体(氷)の密度が液体(水)よりも小さい点が挙げられます。このため、氷と水が共存すると氷は水に浮きます。これは物質として非常に珍しい特性です。

また、水は比熱が大きく、温まりにくく冷めにくいという熱的特性を持ちます。この性質は乾燥プロセスの設計においても重要な要素となります。

状態 名称 密度(kg/cu.m) 比熱(kJ/kg・K)
気体 水蒸気 0.598(100℃) 1.861(0℃)
液体 1000(0℃) 4.223(0℃)
固体 917(0℃) 2.100(-1℃)

なお、温度0.01℃、圧力610.6Paにおいては、水蒸気・水・氷の三つの状態が「平衡して共存」することができ、それを「三重点」と呼びます。

クラスターとは

常温・常圧において液体として存在する水は、単独分子ではなく、主として水素結合によって形成されたクラスター(集合体)として存在しています。このクラスター構造は固定的なものではなく、常に生成と崩壊を繰り返しています。
過去には、「クラスターが小さく流動性の高い水が、健康や味覚に良い」といった表現が消費者向けに用いられたこともあり、聞いたことのある方がいるかもしれませんが、工業的な乾燥操作においては、こうした表現よりも水の結合状態や移動性を正しく理解することが重要です。

水の性質による分類

物質中に含まれる水は、その結合状態の違いから自由水と結合水に分類されます。

自由水

自由水とは、他の物質分子と結合していない水を指し、一般的な意味での「水」に相当します。付着水とも呼ばれます。
さらに細分すると、毛管水や重力水などに分類されます。
他の物質との結合がないため、相変化(蒸発・凍結など)には特別な条件を必要とせず、比較的容易に除去できます。

結合水

結合水は、物質分子と水分子が何らかの形で結合している水を指します。このため自由に移動することができません。
代表的なものとして、水和水や吸着水(帯電による結合)があります。
水和水という表現は非常に幅広く、その中には結晶構造中に水として存在する結晶水も含まれます。
物質によっては、水和物の状態が最も安定であり、この水を除去するためには、通常より高い温度などのエネルギーポテンシャルが必要となります。
一般には100℃以上の加熱が必要とされ、結晶水の種類によっては500℃以上の高温を要する場合もあります。
したがって、水の状態が不明な物質を扱う場合には、熱分析計などによる事前評価が不可欠です。ただし、分析自体が加熱を伴うため、物質によっては測定結果に影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要です。

水分活性

水分活性は、食品中の水と食品成分との結合状態を示す物性値で、Awで表されます。
食品を対象とした乾燥では、「保存性の向上」が重要な目的の一つとなります。
腐敗やカビの発生は、単に水分量が多いかどうかではなく、微生物が水として利用可能な量に依存します。
例えば、漬物は水分を多く含んでいますが、腐敗しにくい食品です。これは、漬物中の水が塩分などと結合しており、微生物が利用できる自由水が少ないためです(水素結合や水和状態も含まれます)。

水分活性を低下させる方法としては、

  • 乾燥による自由水の除去
  • 塩(シオ)や糖類など、水と結合する物質の添加

が挙げられます。

水分活性は、密閉容器内における食品の蒸気圧と、同温度での純水の蒸気圧との比で表され、単位はありません(純水のAwは1.0)。
一般的な目安として、Aw<0.7であれば、通常のカビや細菌の生育・繁殖は困難とされています。

水の含有割合のあらわし方

ここでは、水を含む湿潤成分を「水分」と呼びます。水分の表し方には、湿量基準と乾量基準の2種類があります。

湿量基準(Wet Base)

全体質量に対する水の質量割合を示します。日常的に用いられる「水分」は、通常こちらが使われています。
水の質量 ÷(水の質量+無水質量)
ウエットベースとも呼ばれ、最大値は1で、百分率表示の場合は [% , W.B.] と表記します。

乾量基準(Dry Base)

無水質量に対する水の質量割合を示します。
水の質量 ÷ 無水質量
ドライベースとも呼ばれ、乾量基準では値が1を超えることもあり、百分率表示の場合は [% , D.B.] と表記します。

相互変換

二つの値の相互変換は次の通りです(パーセント表示)。
乾量基準値 =(湿量基準値 ÷(100 − 湿量基準値))×100
湿量基準値 =(乾量基準値 ÷(100 + 乾量基準値))×100
例として、50 [% , W.B.] は 100 [% , D.B.] に相当します。

使い分けについて

湿量基準・乾量基準のいずれを用いても問題はありませんが、どちらの基準を使用しているかを明示することが重要です。
ただし、湿量基準には注意点があります。分母と分子の両方に水の質量が含まれており、乾燥の進行とともに分母自体が変化する点です。
例えば、

  • 95 [% , W.B.] → 90 [% , W.B.]
  • 10 [% , W.B.] → 5 [% , W.B.]

はいずれも差は5%ですが、実際に除去された水の質量は大きく異なります。
このため、乾燥の進行や水分除去量の評価においては、乾量基準の方が実際の質量変化に即した表現となります。